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まるで小説か御伽噺かコンセプトアルバムを聴いてみよう

      2015/11/14

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皆さん、こんにちは。音楽ライターのFuneです。

日に日に気温も下がってきて秋らしさもいよいよ本格化。

秋の夜長、なかなか寝付けないなんて方も

いらっしゃるのではないでしょうか。

ならばいっそ、寝付けない時間を使って

普段より少しスケールの大きい音楽の楽しみ方に

挑戦してみてはいかがでしょう?

今回はそんなお話です。

さて、皆さんは音楽における「作品」というものを問われた時、

どのようなものを想像するでしょうか?

シングル曲単体を思い浮かべる人もいれば、

生々しいライヴ音源や映像を作品と捉える人、

またはアルバムにおける自分好みの曲が

どれくらい収録されているか、を「完成度」として

作品とみなす方も多いのでは?

中には音楽だけでなく、CDジャケット、

ツアーグッズなんかも含めて

作品と考える人もいるかもしれませんね。

今回はこれらの要素を含みつつ、

更にもう一歩、アーティストが表現したいものを

明確にした「作品」たち、

コンセプトアルバムというものについて考えてみたいと思います。

 

そもそもコンセプトアルバムってなんだ?

コンセプトアルバムとは

ある一定のテーマの下に作成された音楽アルバムのことで、

アルバムの中に何かしらの一貫したアーティストの意図が

見え隠れするアルバムのことを指します。

 

主な特徴として

・物語形式の作品が多い。

・印象的なフレーズが数曲に渡って繰り返し登場する。

・曲の順番、連続性を重視し、アルバム全体でひとつの世界観と考える。

・比較的、長尺の曲が多い。

・音源、ブックレットなどに世界観を想像させるギミックがある。

・全容を描かず、リスナーの想像に委ねる部分が多い。

 

などが上げられます。

もっとも必ずしもこれらの特徴に

当てはまらなければいけないわけではなく、

普段やらない音楽性をモチーフにアルバムを作ったものや、

アーティストの心情をテーマに製作されたアルバムでも

コンセプトアルバムとみなしている作品もあります。

よりわかりやすい例を上げれば

クリスマスアルバムなんかは非常にテーマのハッキリした

コンセプトアルバムですね。

一方で、ベストアルバムやシングルコレクションは

この範疇ではあるものの、一般的にはコンセプトアルバムとは

呼びません。

 

世界中で様々なミュージシャンが各々の「コンセプト」を掲げて

独自のアルバムを作成している人気の高い手法でもあり、

洋楽ではジャンルを問わず歴史的名盤とされるものも多く、

時代、世代を超えて楽しめる音楽を通したギミック

非常に面白い分野です。

中には

「これ明らかに音楽やってる人間じゃないとわからんだろ

なんてギミックもあったりする分野ですが(笑)

今回は世界観の想像しやすさ、また音楽的知識がなくても

楽しめるものというテーマで邦楽から5枚ほど選んでみました。

簡単な作品解説も合わせて紹介しますので、

是非色んな角度から音楽を楽しんで頂ければと思います。

BUMP OF CHICKEN

アーティスト名 BUMP OF CHICKEN

アルバム名   THE LIVING DEAD

 

 

 まず最初にご紹介するのは皆さんよくご存知の

BUMP OF CHICKENの初期作から「THE LIVING DEAD」

現在でも若い世代に高い人気を誇り、

所謂ロキノン系バンドの代表格に登り詰め

J-Rockシーンにも大きな影響を与え続けているバンドです。

一般的にはメジャー2ndシングルである「天体観測」

ブレイクで世に知られることとなった彼らですが、

今回ご紹介するこのアルバムは

それより以前のインディーズ時代の作品。

充実した楽曲の豊富さと独創性の高い世界観ながら

共感を得やすい歌詞で絶大な人気を誇る一枚です。

 アルバムの概要としてはアルバムの最初と終わりに

「Opening」「Ending」という曲が配置されており、

泣いている「キミ」に通りすがりの男

(シングル「ダイヤモンド」のカップリング曲

「ラフ・メイカー」に登場する人物と同一説がファンの中で濃厚)

が8曲の物語をプレゼントするという形式で、

それぞれ独立した物語ではあるものの、

どの曲も一貫して孤独や挫折といった負の要素に焦点を当て、

時に立ち向かうように、励ますように綴られた

ポジティヴで暖かい歌詞が本作最大の特徴。

中でも「夢」や「理想」というものに立ち向かう「現実」を

物語の中の描写表現として落とし込んだ「グングニル」と、

その「夢」を追う上での挫折、喪失感、葛藤に

向かい合うさまを独自の切り口で表現した「Lamp」

同じ「夢」というテーマを描きながらも

人それぞれの立ち位置を表しているようにも感じられ、

共感の仕方に多様性を残したという意味でも

面白い対比として成立していると思います。

物語形式とは言え、しっかり万人の共感を得るだけの

「隙間」があるのがポイントでしょうか。

 その一方で、黒猫と絵描きの物語として

世界観を完全に限定しながらも孤独からの存在価値を

見事に表現したKは本作のハイライト。

アルバムの中でも明確にキャラクター性を与えられた

登場人物が活躍する数少ない曲であり、歌詞の描写力と

メロディの親和性の高さはアルバム内随一の完成度。

曲の最後で「K」というタイトルの意味が判明する

ギミックも実にコンセプトアルバムらしい仕掛けです。

結末に思わず涙した人も多いのではないでしょうか?

 コンセプトアルバムとしては純粋にテーマ性が

優先されたアルバムなので難解さがそれほど無く、

通常のポップスアルバム的に聴くことが出来るので

コンセプトアルバム入門には最適な一枚です。

気に入った曲だけ抜き出して聴いても充分楽しめますが、

アルバムコンセプトを念頭に置いて聴いてみると

思わぬところに共通点を見出すことが出来るかもしれませんね。

Cymbals

アーティスト名 Cymbals

アルバム名   Mr.Noone Spacial

 

 

 コンセプトアルバム入門としてもうひとつオススメなのが

CMナレーションなどでお馴染み、かつて土岐麻子(Vo.)

在籍していたポスト渋谷系ロックバンド

Cymbalsの2ndアルバム「Mr.Noone Special」です。

前作「That’s Entertainment」に登場した

Mr.Noone Special(何者でもない氏)という人物にスポットを当て、

Cymbalsのメンバーが彼を紹介しつつ、

時折Mr.Noone Spacialが茶々を入れるというスタイル

アルバムが進行していくのですが、

全体的におもちゃ箱をひっくり返したようなポップで

カラフルなサウンドをブリティッシュロックテイストで

味付けした聴きやすい音楽に仕上がっており、

アルバムの概要を無視して聴いても

激しくもオシャレなサウンドが心地良い一枚です。

アルバム収録時間僅か30分ほどという

手ごろな視聴時間も魅力のひとつ。

 コンセプトとしてはMr.Noone Spacialが何者なのか?という

部分ですが、実は1曲目「Mr.Noone Spacial」の時点で

いきなりのネタバレが炸裂してるんですよね 笑

 しかし、曲を進めていくとMr.Nooneという人物像は

「ちっぽけな誇りなんて捨てろ!儲けたら買い戻せる」と

Cymbalsらしい意地の悪さを歌ったジャジーなテイストが

非常に爽快な「Low Cost,Low Price & High Return」

「魔法を信じる?魔法はここにあるんだ」と夢見がちなことをいう

「Do You Believe in Magic?」などで語られるように、

Mr.Nooneの紹介という体でありながら一貫せず、

どんな人物なのか進めば進むほど

わからなくなっていくように作られています。

挙句の果てにはCymbals結成秘話を題材にした

「Hey,Leader!」なんて曲が出てくる始末 笑

そして「Mr.Noone Special(Reprise)」で明かされる

Mr.Noone Spacial衝撃(笑)の正体!

お聴きになる際は是非歌詞カードをご一緒に♪

よくよく歌詞を読んでみるとすぐにわかる内容ですので 笑

 曲単体で聴いても非常にクオリティが高いですので、

まずは試しに屈指の名曲

「Highway Star,Speed Star」辺りから☆

自信を持ってオススメしますよ!

 

Mr.Children

アーティスト名 Mr.Children

アルバム名   深海

 

 さて、ここまでは比較的アルバムの流れを考慮しなくても

楽しめるアルバムを紹介してきましたが、

もう少しアルバムの「流れ」というものを意識した

コンセプトアルバムに注目してみようと思います。

Mr.Childrenといえば実にハートウォーミングで

巧みな心理描写を得意とする邦楽を代表するバンドですが、

この「深海」では巧みな心理描写はそのままながら

他のアルバム以上に暗く、重苦しさが強調されており、

ファンの間でも「踏み絵」として囁かれているとかいないとか 笑

最近のミスチルしか知らない人にとって

この内向的な作風は結構衝撃かもしれません。

桜井和寿(Vo.Gt.)の発言によると、このアルバムは

次作「BOLERO」の中の一曲と捉えていたそうで、

それを裏付けるようにほとんどの曲が繋がっており、

曲の連続性にこだわりを見せています。

 水に飛び込む音で構成されたSE的な「Dive」

幕を開ける「深海」の世界。

公式にコンセプトは発表されていないのですが、

このアルバムの最も重要なキーワードは

2曲目のタイトルにもなっている「シーラカンス」

一曲に留まらずこの単語とメロディは他の曲にも波及し、

アルバム全体を統括するテーマのように扱われています。

この「シーラカンス」が何を指すのかが本作最大のポイント。

曲中で「シーラカンス」に何らかの価値を見出しながらも

「何の意味も 何の価値も無いさ」と完全に切り捨て、

それでも他人の中にそれを見出そうとしている

「僕」の矛盾は人間そのものの苦悩に満ち満ちており、

その後続く曲も多かれ少なかれ心の辻褄が合わない

矛盾を内包した曲として描写され、

この頃の桜井氏のメンタルが本気で心配になるほど後ろ向き。

この「シーラカンス」を「何に」解釈するかで

アルバムの印象がガラリと変わります。

 そんな中でアルバムのもうひとつの重要なキーワード

となるのが名曲「名もなき詩」で、

この曲の中でも自己矛盾を抱えた「僕」が登場しますが、

その理由の多くは「あるがままの心」でいることによる弊害と

位置づけているように感じられます。

「あるがままの心」を何に解釈するかで意見は分かれそうですが

個人的には「自分らしさの檻」を理性と捉えれば

「あるがままの心」は「本能=純粋さ」と読み解くことが出来ます。

「あるがままの心」でいるからこそ周りと摩擦が起きる、

心に自己矛盾を抱えてしまう、様々な解釈が可能ですが

ここでは明確な肯定も否定もせず、再び自己矛盾を抱えた

曲をいくつか挟むことになりアルバムは進んでいきます。

 そしてそれら自己矛盾を初めて肯定的に「等身大の自分」

として認めた到達点「花 -Memento-Mori-」を経て、

終曲「深海」の最後で「連れ戻してくれないか」と

「シーラカンス」に語りかける「僕」

その姿はまるで無くしてしまった

「純粋さ」への懺悔のような歪な人間の美しさそのもの。

そして曲の最後に聞こえてくる深海から

昇ったとも潜ったとも取れる水音をもって

「深海」というアルバムは終わりを告げます。

果たして「僕」はどのような決断を下したのでしょうか…。

それはリスナーの想像に託されています。

 コンセプトアルバムとしては難解な部類に当たり、

人それぞれの解釈があると思いますので

明確な答えは存在しませんが、人間心理という難しい題材で

ここまで見事なアルバムの流れを形成しているのは流石です。

アルバムを通してあれこれと解釈を考えてみると

聴き馴染んだ曲でも新しい一面が見えてくるかもしれませんね。

余談ではありますがこのアルバム、サウンド的には

Pink Floydの影響が非常に顕著です。

気になった方は「Dark Side of the Moon」「Wish You Were Here」

辺りを聴いてみると、音楽的にも違った一面が見えるかも?

 

 

TM NETWORK

アーティスト名 TM NETWORK

アルバム名   CAROL~A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991~

 

 ここまで紹介したアルバムは比較的「物語性」というものが

希薄でしたが、いよいよコンセプトアルバムらしさを

如何なく発揮した「音楽で紡ぐ物語」をみていきましょう。

・作品概要

 音楽を視覚化する装置、グラフィックシステムが発達した世界の

イギリス郊外に住む少女、キャロル・ミュー・ダグラス

勉強、運動も平均的などこにでもいる17歳の女子高生。

唯一、彼女が得意な事といえばグラフィックシステムを使った

音楽に込められたメッセージを読み取る科目くらいだった。

そんな彼女が熱中するものは

デビュー以来6作連続でミリオンセラーを達成した

正体不明のバンド「ガボール・スクリーン」

キャロルにとって彼らの音楽を手に入れるためなら

遠く離れたロンドンまで買いに行くことも苦ではない熱中ぶり。

しかし、新たに発表された新曲は世間では

何故か全く評価されず、キャロル自身も何か違和感を覚える。

 程なくしてイギリスの街から音が次々に消えていく事件が起きる。

ロンドン・フィル・ハーモニーに所属する父は

チェロの音色を奪われ、ビックベンの鐘の音が鳴ることも無くなった。

「誰かに音を盗まれている」

キャロルはその秘密をガボール・スクリーンの新曲に覚えた

違和感にあると確信し、彼らの音楽を

グラフィックシステムにかける決意をする。

スイッチを入れた瞬間、不思議な光が溢れ、

どこからか聞こえる不快な重低音と呪詛の声に包まれた

キャロルが次に見たものは音を盗む悪魔、ジャイガンティカ

支配され、荒廃の一途を辿る暗黒の異世界だった。

盗まれた音を取り戻すため、仲間達と共に

キャロルは悪魔と戦うことになるのだが…。

 

この「CAROL」TM NETWORK最大のヒット作。

いくつかのシングル曲を除いてひとつの物語となっており、

アルバムを進めるごとに目まぐるしく情景が変わっていきます。

最大の特徴は音楽アルバムを主体としたメディアミックス企画

となっている点で、物語のディテールを描いた

木根尚人(Gt.)執筆による小説版、アニメ映像化、ラジオドラマ、

そして「CAROL」の世界観を再現したライヴ公演など

各メディアが相互に補完しあってより深く世界観を楽しめる

という仕組みが施されています。

例えばアルバムの中では言及されていない

キャロルの仲間達が小説ではしっかり掘り下げられていたり、

「CAROL」本編には関係の無いシングル曲

「Come On Everybody」がアニメ版では

ガボール・スクリーンの曲として扱われていたり、と

アルバム全体の世界観を考察する手がかりが

様々な手段で用意されています。

 勿論肝心の音楽の出来も素晴らしく、

物語の始まりを告げる神秘的なオープニングトラック

「A Day In The Girl’s Life(永遠の一瞬)」や、

迷い込んだ闇の世界を駆け抜けていく少女の姿が

しっかり音楽で表現されている

「Chase In Labyrinth(闇のラビリンス)」の完成度の高さ、

小室哲哉(Key.)の手に掛かれば悪役サイドの描写すら

野性味と奇怪さを残したダンスサウンドに仕上がる

「Gia Corm Fillippo Dia(Devil’s Carnival)」など、

思わずライヴでどのように再現されているのか

興味を掻き立てるものばかり。

TM METWORKの三人がライヴでは

キャロルの仲間として登場したり、

これまでサポートメンバーであったB’z松本孝弘(Gt.)

ライヴでは悪役側の重要人物に扮している

という点も面白いですね。

コスプレ?している松本氏は一見の価値有り 笑

ライヴのとあるシーンでは実力に裏付けられた

凄まじいテクニックを存分に聴かせてくれます。

 ここまで物語形式にしてしまえば通常は歌詞が

情景説明ばかりになってしまうものですが、

このアルバムでは不思議とそういったクドさを感じさせない

日常生活の延長のような歌詞表現の絶妙さも

魅力のひとつでしょうか。

SF的要素あり、ファンタジー要素ありの面白いアルバムなので

アルバムを通して聴くことでしか味わえない

アルバム上での「CAROL」のエンディングである

「Just One Victory(たったひとつの勝利)」の多幸感に満ちた

サウンドを体感して欲しいですね。

 発売から13年の時を経てミリオンセラーを達成した

非常に息の長い作品ですが、2013年に小室哲哉本人が

執筆した再び音楽とクロスする新作小説「CAROLの真実」

現時点でTM NETWORK最新作「QUIT30」

一部ではありますが本編がリメイクされるなど、

まだまだCAROLの物語は終わりそうにありません。

結成30周年を節目にあらたな「扉」を用意したTM NETWORK。

何故未だにこのアルバムが愛され続けるのか、

是非その目で確かめて頂ければと思います。

Sound Horizon

アーティスト名 Sound Horizon

アルバム名   Märchen

 

 Sound HorizonはサウンドクリエイターRevoのみで構成された

音楽ユニットで、活動開始当初から一貫してコンセプトアルバムを

作り続けている現代の邦楽シーンでは珍しいタイプのユニットです。

つまり早い話が自分以外ボーカルまで全てサポートメンバーという

今までの音楽スタイルを覆すような活動形態が特徴。

(曲によってはRevo本人がボーカルを担当することもある。)

一般的にはアニメ「進撃の巨人」の主題歌を担当していた際の

Linked Horizon名義のほうが有名でしょうが、

本来はこちらの活動がメインです。

「CAROL」は比較的ストーリーが一本道のわかりやすい

コンセプトアルバムだったのに対して、

Sound Horizonの音楽は物語形式のコンセプトアルバムとして

非常に難解な部類に入り、基本的に概要だけを描いた

「正解の無い物語」を得意としている音楽です。

アルバムをリリースする度に毎回確実に

その内容を巡ってファン同士で様々な考察が行われており、

その考察という部分に非常に興味深い音楽文化が

形成されているのですが、今回は比較的イメージしやすい

「童話」をモチーフにした7thアルバム「Märchen(メルヒェン)」という

作品を例に、まずは作品の概要を見てみましょう。

・作品概要

―この物語は虚構である。

  然し、其の総てが虚構であるとは限らない。―

 

 中世ドイツ(と思わしき)、とある廃村の古井戸の中で

目覚めたメルことメルヒェン・フォン・フリートホーフ

自分がいつからここにいるのか、そもそも自分が誰なのかも

わからず井戸の底から丸い夜空を見上げていた。

かすかに覚えているのは、昔、誰かを愛し、愛されていたこと。

そして、自らが殺されてしまったという事実。

湧き上がる憎悪の念と、井戸の底から語りかけてくる「声」

そんなメルの傍らに佇むのはメルへの愛と

自分達を殺めた者への復讐を謡う少女人形エリーゼ。

彼女の声色にどこか懐かしさを覚えながら、

人ならざる者へと変わってしまった事を悟ったメルは

目的も理由もわからないまま、抗えぬ「衝動」に従って

エリーゼと共に井戸を飛び出し、様々な人間たちの

復讐を手助けをしながら暗躍することとなる。

事の真偽は別として復讐者たちの願いを叶え、

時には自ら復讐劇に介入しながら

永遠に世界への復讐を続ける二人であったが、

最後の「復讐者」に出会った時、

メルは宵闇に包まれた自らの過去と対峙することとなる。

 

 このアルバムのコンセプトは「復讐劇」

「童話」をモチーフにした7つの復讐にメルとエリーゼが介入し、

「本当は怖いグリム童話」さながらの残酷な物語を聴かせてくれます。

どの曲がどの童話が題材になっているのか、

時代背景を考えて、当時世界でどのような事が起きていたのか、

なんて部分を考えながら聴いてみるのもなかなか楽しい作品。

7つの物語に7つの大罪をそれぞれテーマとして当てはめている

「7」にこだわったアルバムに仕上がっており、

仕掛けられたギミックの多さは他のコンセプトアルバムの

追従を許さないほど非常に多彩です。

 このアルバムの面白い部分は前日譚として

Prologue Maxiという名目の「イドへ至る森へ至るイド」という作品が

先にリリースされており、Märchenにおけるバックストーリーとしても

重要な意味合いを持ち、このシングルを聴いているかいないかでも

Märchenという作品への解釈が大きく変わる仕掛けが施されています。

特にエリーゼの素性については、こちらを聴かないとまずわかりません!笑

何故、彼女がメルに固執し、復讐を望むのか、

その理由はこのシングルのある曲に隠されていたりして…。

 この世界観を楽しむために様々な仕掛けがある、という点は

Sound Horizonが非常に得意とする手法で、

ライヴを見て初めてその仕掛けに気がついたり、

ジャケットに謎解きのヒントが散りばめられていたりと、

ちょっとした仕掛けでも気づくか気づかないかで

印象がかなり変わるという意味では小説的な音楽とも言えるでしょう。

今回冒頭で紹介したコンセプトアルバムとしての要素を

全て含み、単純に音楽だけを聴いていたのでは

基本的に全容がほぼわからないようになっているので、

世界観を読み取るのであれば最低でも歌詞カードは必須です。

中には過去のSound Horizon作品との繋がりを思わせるものも

あったりするので、古参のファンも思わずニヤリとする仕掛けも。

 作曲者のRevo曰く

「明確な答えは用意しないので自由に想像して楽しんで欲しい。」

とのことで、このアルバムにも完全な結論というものは存在しません。

提示されたパーツを使って自分の組み立てた物語に

説得力を持たせるために世界観を考察する、

なんて逆説的な楽しみ方も可能です。

裏を返せばそのギミックの多彩さも含め

Sound Horizonの音楽はかなり「濃い」音楽でもあるので

人によっては好みがかなり分かれるかもしれませんが…汗

まずは比較的モチーフが想像しやすいこのアルバムから

聴くことをオススメします。

 アルバムの性質上、物語に正解というものがありませんので

このアルバムに関しては、あえて曲の解説は省きますが、

実はこの「物語として正解がない」というSound Horizonが

一貫して行っている手法は現代音楽シーンにおいて

面白いビジネスモデルを形成していたりもします。

というのも、この「正解のない物語」を巡ってファンが自発的

様々な媒体で独自のコミュニティを形成し、

各々の組み立てた物語を披露し合い、

クリエイター側の手を離れてファンが新しいドラマを作っていく

という非常に興味深い文化が誕生しており、

この現象は「聴く」「見る」「共有する」というスタンダードな

音楽の楽しみ方に新たな一面を提示したといっても過言ではありません。

ビジネスとしてもファンによる考察のための関連する書籍、

グッズ、ライヴ映像の販売、そしてミュージカルさながらの

ライヴ公演への参加は様々な経済効果を促しており、

特典商法などが批判されがちな音楽市場において、

需要と供給のバランスを絶妙に体現した音楽ビジネスモデルとして

個人的にも興味深くその推移を見守っています。

近年の邦楽業界で音楽以外の部分でも楽しめる、

という部分に関しては恐らく最大規模の商業的成功を

修めているグループですので、

今後、どのように音楽業界へ一石を投じていくか、

非常に楽しみな音楽です。

もしかしたら今後、こういった音楽の楽しみ方が

主流になる日もくるかも?

 

最後に

さて、今回はちょっと大掛かりな音楽の楽しみ方として

コンセプトアルバムというものを紹介してみましたが

お楽しみ頂けたでしょうか?

気軽に楽しめるものから、その難解さに

思わず頭を悩ませてしまうものまで、様々なタイプの

コンセプトアルバムを紹介してみましたが、

少しでも興味を引くようなアルバムがあれば幸いです♪

個人的にはコンセプトアルバムという手法には

まだまだ音楽だけでは完結しない楽しみ方という

可能性が多く残されている分野だと思っていますので、

その発展には大いに期待していますし、

もし今回のコラムをきっかけに

興味を持って頂けた方がいれば

是非、音楽に連続性を見出して色んな角度から

音楽を楽しんで頂けたらと思います。

色々考察してみると、アーティストの思わぬ一面が

垣間見れるかもしれませんね☆

それではまた次回お会いしましょう♪

Bye Bye~☆

この記事を書いたライター

Fune孤高の音楽ライター
元ミュージシャン、現カメラを趣味とする音楽ライター。
音楽の可能性を日々追求中。

 - おとのいろいろ, くりえいたー系 ,

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